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設立趣意

「4K IP接続テレビ」の実現を目指して

IPTV市場の現状

現在の日本のテレビ放送を考えると、世界とはまったくかけ離れた方向に突き進んでいます。地デジ中継網というやり方で放送を行っている国は世界では極めて少数です。有料多チャンネル化を推し進める段階で世界の潮流はCATV網に移行しました。日本の場合、多チャンネル化推進のため衛星放送へと軸足を移しました。そして、4K・8K放送時代になり、BS・CS左旋周波数へと帯域の拡大を図っています。世間ではあまり問題視していませんが、左旋周波数帯域は3.2GHzまで伸びているため、これまでの同軸ケーブルでは視聴できません。

多チャンネル化の波が押し寄せたときに大きなチャンスが二つありました。一つはCATV、もう一つはIP化です。2000年にBSデジタル放送、3年後の2003年に地デジ放送が始まりました。そして2006年にIPTVの規格化が完了した際、テレビのIP接続が拡大すると誰もが予測しました。しかし2020年現在、広域IPマルチキャストサービスを利用する世帯は7.5%(399万世帯/5,340万世帯で計算)です。2013年にハイブリッドキャストの規格化が始まった時に、動画再生はMPEG-DASHのみで、IPTVのプロトコルは採用されませんでした。2020年、地デジ・衛星・IPTVを含めたリニア放送も曲がり角にきたと感じている人は私だけではないでしょう。

RF伝送方式の問題点

RF(Radio Frequency)伝送(地デジ・BS・CSを含む)という方式を採用すると、常に帯域の増加という問題に直面します。チャンネルが増えると使用する周波数帯域もそれに伴って必要になります。今後、左旋放送を視聴するためにどれだけの改修費用が必要となるのでしょうか?
NTTのフレッツテレビは左旋対応のため、使っていないUHF帯域に左旋周波数帯域を割り当て、テレビの前段で本来のBS・CS左旋IF周波数にアップコンする方式を採用しました。そのユニットは別売しています。別売ユニットは1台9,000円なので、現在の視聴世帯数を163万世帯とすると総額146億円かかることになります。日本全国の世帯数は約5,000万世帯なので、全ての世帯を対応するとなると天文学的な数字になります。

未来のテレビに不可欠なIP伝送

4K・8K放送に関して、もっとも適している伝送方法はIPです。その理由は、規格の段階から圧縮したコンテンツはIP伝送をベースにしているためです。4Kは25Mbps、8Kは100Mbpsで伝送できます。今の地デジとBS放送を全部束ねても2Gbps程度です。これはIPv6ネットワーク網の10Gps~50Gbps基幹伝送からすると大きな問題にはなりません。

今はテレビをIP接続させる最後の機会です。もし、このままRF伝送を推し進めていくと、その世界に参加する放送局はショッピングチャンネルだけになるでしょう。衛星放送の広告収入では全く食べていけません。民放の広告収入はここ数年下降気味で2018年にネット広告が追いつきました(※地デジ広告費=1兆7848億円、インターネット広告費=1兆7589億円、総広告費=6兆5300億円(電通調査))。低予算のインターネット広告市場は爆発的に広がっており、その上昇は止められない状況です。インターネット広告の場合、低予算なだけではなく、ピンポイントでターゲット顧客の絞込みが可能です。そのため、地デジ広告の伸びは期待できない状況です。これからの広告は、視聴者の好みに合わせたものでないと効果が期待できません。IP化して、アップリンクで顧客情報を収集する必要があるのです。放送をIPの世界にも広げて、誰もが低予算で発信できる枠組みを作らなければ、放送局の未来はありません。

IP伝送への実現に向けた具体的なご提案や技術内容などは、本サイトにて詳細を記述しています。ご興味のある方はぜひご覧いただき、率直なご意見をお寄せください。「4K IP接続テレビ」の実現を目指して、世界に負けないテレビを作りましょう。

発起人 代表 栗須基弘
(ヒロテック株式会社 代表取締役)

発起の理由 ~なぜIP接続が必要か?

電波による放送はラジオから始まり、1953年に現在のテレビ放送が始まりました。2000年にBSデジタル放送、2003年に地デジ放送が始まるまで、テレビは受信するだけの装置でした。そして、デジタル放送が始まると、一部が双方向になりました。例えば、NHK紅白歌合戦で紅組・白組の投票数をネット経由で集計する機能は、データ放送を使っています。2006年にIP放送が規格され、2013年にハイブリッドキャストが導入されると、テレビはインターネット接続できるようになりました。

伝送レートによる比較

伝送レートという観点から3つの方式、すなわち、「テレビ放送」、「IP放送」、「SVOD(NETFLIXなどのSubscription Video On Demandの略)」を比較すると、以下の図のようになります。


一番効率が悪いのは「SVOD」です。ユーザ数が増えるとその倍数で伝送レートも増えます。現況のネットワークは画像伝送でほぼいっぱいであることが推測できます。「IP放送」はマルチキャストで伝送されます。「IP放送」も「テレビ放送」もユーザ数には依存せず、伝送レートは一定です。「テレビ放送」で使う情報量は「IP放送」の約10倍(RFアップコンする前のデジタル量での割合)になります。

「テレビ放送」と「IP放送」の一番の違いは、「変調されて伝送されるか?」と「ベースバンドで伝送されるか?」になります。「IP放送」のベースバンドデータはTS(トランスポートストリーム)というデジタルストリームです。デジタルストリームは1/0の値で、4K放送では22.5~25Mbps程度を使います。これを変調したものが「テレビ放送」です。変調すると周波数帯域が必要になります。現在の地デジは帯域6MHz, UHF13~62チャンネルが割り当てられています。BS・CS110は、さらに広範囲な周波数帯域(34.5MHz/40MHz)を使います。使える周波数帯域には限りがあるのが「IP放送」との大きな違いです。

新しい放送局を開局したい場合、「テレビ放送」の場合、貴重な周波数帯域を割り当てるため、調整が必要になります。2019年に総務省はBS再編を行いましたが、これは4K/8KをBS右旋に入れるためでした。現状では、左旋にはかなり空きがあります。「IP放送」の場合、設置した光ファイバーとルータによってチャンネル数が決まります。その比率(IP放送チャンネル/テレビ放送チャンネル)は「IP放送」で使うルータが50Gbpsの場合、今の地デジ、BS・ CSを足したものの約35倍になります。「IP放送」のほうがチャンネル数を簡単に増やせることがわかります。

ケーブルテレビの普及状況について

残念ながら マルチキャストIP網からリニア放送を受信する世帯数は、ケーブルテレビ市場(3055万CATV世帯数のうち94万世帯がIPマルチキャスト方式で視聴:平成31年3月時点)の約3%で停滞しています。ここが大きな問題になります。なぜでしょうか?それは、インターネット網を実現するIP伝送の土管が大きくならないのです。

出典:総務省「ケーブルテレビの現状(平成31年3月版)」より抜粋
https://www.soumu.go.jp/main_content/000504511.pdf

現状のIP伝送でもっとも伝送量を占めるのは動画配信になります。その代表的なものとして、NETFLIXやAmazonプライムなどが挙げられます。こういった動画配信は「SVOD」と呼ばれます。ユニキャスト(一度に1ユーザだけ)で接続し、必要なときに必要な番組を視聴します。一方、これまでのテレビ放送はリニア放送と呼ばれ、マルチキャストで配信されます。情報量としてはSVODが圧倒的に多く、贅沢で伝送方法としては効率がよくありません。これに対してIPリニア放送はマルチキャスト(一度に全員に同じものを送る)送信なので非常に効率がよいのです。

リニア放送とSVODとでは、その役割が全く違います。リニア放送は視聴者の好みなどとは関係なく情報を送りつけます。これに対してSVODはすでに知っている情報などから検索することで、視聴したい番組を自分で探す方法です。実は人間が情報を取得する方法としては両方が常に必要になります。最近では検索エンジンが発達しているので、それを万能と考える人がいますが、実はまったく知らない情報はリニア放送で得ることのほうが多いのです。全く知らないことを検索することはできません。

現状ではSVODが圧倒的に繁栄し、IPリニア放送が絶滅の危機に瀕しているといっても過言ではありません。そのバランスをとることが非常に重要なことなのです。日本における現状のテレビ放送を全部まとめても1.43Gbps(地デジは主要局8局で計算、衛星は右旋のみ16.9×8+54×12+54×12)程度です。地方局を含め、東西で分割しても3Gbps程度でしょう。リニア放送の需要が増えれば、これまで10Gbpsの幹線を、50Gbpsへ増やすことになります。幹線が大きくなれば、SVODのサーバ接続もよりスムーズになります。幹線が小さいと伝送線路の取り合いになり、常に混雑した状態になります。

IPリニア放送の行方が、今後の日本のネットワーク隆盛を大きく左右することになります。私は、今こそ、テレビをIP接続させる最後の機会と捉えて「4K IP接続テレビ」の実現に向けた提言を行います。

本件に関するご意見・お問い合わせ

「4K IP接続テレビ」の実現に向けた提言に関して、みなさまの率直なご意見をお待ちしております。また、提案した方式へのご賛同やARIBへの規格化等、お気軽にお問い合わせください。