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具体的手段

新しい方式を用いた具体的手段

● パイプチャンネル方式を採用したIP-RF変換器

今回の提案は、パイプチャンネル方式を採用したIP-RF変換器を使ってテレビをIP網に接続するという方法です。この場合、大きく2つの規格変更が必要になります。一つはテレビのチューナ制御部の変更、もう一つは地デジ変調TSでの4K HEVC再生への変更です。

● 新方式の特徴

(1)既存テレビをIPネットワークに接続させるため、IP-RF変換装置を使う。
(2)日本全国の地デジ放送を視聴可能にするため、区域内は無料、区域外は有料化させる。
(3)BS/CS1/CS2はパイプチャンネルで視聴可能にして、左旋周波数問題を回避する。
(4)4K放送+新規チャンネルもパイプチャンネルで視聴にするため、22.5Mbps以下に圧縮して伝送する。
(5)世界の放送をIPで視聴できる環境を整備する。

新方式のシステム構成図


(1)既存テレビをIPネットワークに接続させる

テレビを広域マルチキャストネットワーク網に接続する。これが最大の目的です。そのために、多チャンネルIP-RF変換装置を使います。IPv6ネットワーク網に直結してデジタル信号をテレビのRF信号に変換する装置です。変換する地デジパイプチャンネルは4CHで、テレビとブルーレイなどをサポートします。
VONUによるFTTHは、距離が伸びると光の減衰という本質的な問題がありますが、デジタル網には減衰はありません。新方式はFTTHのデジタル通信網だけを使って実現できます。
コンテンツは一次利用が原則です。最終的にIP-RF変換器で変調するので、最終段は電波になります。

既存の地デジ電波中継網にIP伝送中継網を追加したシステム構成


(2)日本全国の地デジ放送を視聴可能にする

これまで、地デジ中継局網は区域別でした。今回の提案も区域別に対応します。そして無料視聴です。ただ、疲弊する地方局の収益向上のため、区域外の地デジを有料で視聴できるようにします。そうすることで、郷里の番組を視聴可能にします。

(3)BS/CS1/CS2の右旋と左旋はパイプチャンネルで視聴

全ての衛星放送は新しく導入するパイプチャンネルで視聴できるようにします。このパイプチャンネルは1台のテレビ受信機に基本的には一つです。DVDプレーヤなどの場合、時間的に複数のパイプチャンネルを使うこともできます。このパイプチャンネルは地デジ変調の伝送に使用するので、UHFケーブル帯域のみを使います。左旋周波数のようにケーブルが使えないといった問題は起こりません。一部のBSチャンネルは22.5Mbps以下に再変換する必要がありますが、大半は衛星に上げているデジタルストリームをそのまま、パイプチャンネルで流せます。以下は4CHを使って4台のテレビに放送を送出しているところを表現しています。

4CHを使った4台のテレビへの放送の放出


パイプチャンネルの手法はこれまでのチューナの概念を変えるものです。これまではチャンネルが増えるたびに使用する周波数帯域も増えました。また、BS/CS左旋周波数は既存の多くのケーブルでは伝送できません。今回の提案では、テレビとの接続には1つのパイプチャンネルを使います。そしてチャンネルリストという概念を導入します。例えば、BS101を選局する場合、選局時にBSチューナにBS101の周波数設定を行う代わりに、BS101のチャンネル要求をIP-RF変換器に送信します。IP-RF変換器にはBS101を受領するためにIPアドレスとポート番号のテーブルがあります。これを使ってマルチキャストネットワークから必要なストリームを選択して再生します。そしてパイプチャンネル周波数でISDB-Tで変調して、テレビに送信します。使うのはUHFチャンネル帯域のみになります。

(4)4Kもパイプチャンネルで視聴

現状の地デジ主要局、および、地方局のために、4K放送の道を開きます。 BS/CS1/CS2と同様に4Kを22.5Mbpsに圧縮し、地デジで変調してテレビで受信します。通常のTS形式で4Kデコードします。現状の規格では地デジHEVCは定義されていません。したがって、規格の変更が必要になります。

(5)世界の放送をIPで視聴

これまで、海外のテレビ番組を直接視聴する方法は、ネットのサイトでブラウザからアクセスする程度でした。その理由は既存のテレビで選択できるチャンネル数を無制限に増やすことができなかったからです。ただ、今回の方式を採用すると幹線のネットワークの伝送レートの制限はありますが、パイプチャンネルでの制限はないので、かなりの数のチェンネル追加が可能になります。

LAN接続のIPTVに比べて凡庸なのか?

パイプチャンネルによるIP接続は一見凡庸な手法にも見えます。RF接続ではなくLAN接続すればよいではないかと思う人もいるでしょう。
しかし、実は現状の大半のテレビは100ベースLANをアップリンクに使っています。家庭内でマルチキャストのTSを流すと、他のサービスを受信するのはほぼ無理です。結局、マルチキャスト-ユニキャスト変換器が必要になります。また、これまでのテレビはLAN端子から高速なTSを受信できるような構造にはなっていません。せいぜい、TCP/IPなどのコマンド応答が限界です。さらにACAS/BCASレベルのセキュリティをIP接続では実現できません。
そういった理由から、パイプチャンネルという概念を使うことで、すでに市場に出回っているテレビをIP接続させるというのは理にかなっているのです。

パイプチャンネル方式の規格化とダウンロード

今回の提案は、ARIB規格の変更が必要になります。チューナ制御と4K地デジ受信の二つです。現実的な対応としてはアナログからデジタルになったときに比べるとかなりマイナーな改修で済みます。規格を定め、通信プロトコルスタックとチューナ制御ソフトを追加し、SDTTを使って新しい方式を追加したソフトウエアをダウンロードするだけです。テレビにIP-RF変換器が接続されると自動でダウンロードが開始されるようにします。

本件に関するご意見・お問い合わせ

「4K IP接続テレビ」の実現に向けた提言に関して、みなさまの率直なご意見をお待ちしております。また、提案した方式へのご賛同やARIBへの規格化等、お気軽にお問い合わせください。