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家庭のポータルとしてのテレビ

テレビを見ていると電話が鳴り、テレビに向かって話をする。アレクサやグーグル端末に話しかけるかわりにテレビに話しかける。そういった新しい機能を備えたテレビを切望するのは、私だけではないでしょう。単なる映像再生以外の機能をテレビに実装して「家庭のポータルとしてのテレビ」とする。高度経済成長期の日本のテレビメーカーであれば、そういった機能をいくらでも発明できたのではないでしょうか。

1992年以降のバブル崩壊から、現実には「家庭のポータルとしてのテレビ」は外国勢に席巻されています。2020年の現在では、テレビ製造メーカの体力は著しく衰えてしまいました。また放送局の広告収入は伸び悩みの状態です。若い世代のテレビ離れも始まっています。

電波王国からIP王国へ

米国では1980年代有料多チャンネル化でCATVが始まり現在では衛星放送とIPTVが加わっています。2015年頃から、IPTVが減少傾向で代わりにNETFLIXなどのOTTが台頭し、2017年にNETFLIX単体(5085万人)でCATV契約者数(4861万人)を越えました。これに対して日本のCATV市場は2019年には約57%(3055万/5340万世帯)で、地上波(+衛星)で視聴する世帯はだいたい43%になります。日本は米国(11%程度 2009年)に比べると電波王国になります。
4K放送は右旋に追加してBS/CS左旋周波数に割り当てますが、2.2GHz~3.2GHzのIF周波数は現状のケーブルでは伝送できません。本格的な放送が始まるとテレビ1台あたり約9000円のアダプターが必要になります。一家庭平均2.6台で計算すると天文学的な金額になります。
また、民放などの広告収入は横ばいで本年ネット広告に抜かれる予測もあります。こういったことから、電波による単一方向の伝送から双方向通信が可能なIP伝送に軸足を移し、IPの土管を大きくする。すなわちIP王国を目指す必要があります。
そのためにはまず、IP伝送を1次利用として著作権問題を回避させます。次に無線とIPで分かれていた規格を合体させます。テレビ受像機が無線だけを受信する時代は終わりました。IPも受信させる広範囲な規格にします。そしてコンテンツを供給したい事業者と視聴者が直結する伝送社会を築きます。放送をしたい人は今でもいます。その垣根を下げる新しいやり方が望まれます。

なぜIP接続が必要か?

電波による中継網とIP網による配信に関して比較したものが以下の表です。

電波中継網 IP伝送網
多チャンネル化 限界がある 限界がない
双方向性 ×
機能追加 限定的 限界がない
伝送方法 multicastのみ multicast+unicast
伝送距離 限界がある 限界がない
伝送維持費 独立して必要(衛星+電波塔) 通信との共用

その差は一瞥すれば、歴然です。同軸ケーブルのCATV網から光ファイバーへ移行するときに、デジタル伝送の代わりに、地デジ+BS/CS電波を光信号に変換し、光ファイバーで家庭内のVONU(光>>電気変換)でRF信号に戻す。これが日本のFTTH方式です。この状況を打開する必要があります。

過去の経緯

テレビをIPに接続する機会は大きく2つありました。

2006年に仕様が完成したのが広域マルチキャスト網に接続するIPTV方式です。これは本局からのプッシュ型になります。これに対して2013年から本格的に始まったのがハイブリッドキャスト方式です。これはHTML5形式で記述されたサーバのコンテンツを取りに行くプル型のサービスです。プロトコルとしてはIPTVで採用されたのがRTP形式、ハイブリッドキャストで採用されたのがMPEG-DASH形式になります。理由はわかりませんが、RTP/RTSPがハイブリッドキャストに規定されることはありませんでした。通常のHTML5には定義されています。

一般社団法人 IPTVフォーラムを開くとトップページにハイブリッドキャストサービスが表示されます。当初のIPTV仕様はNTTぷららなど一部の企業で実用化されました。ハイブリッドキャストは鳴り物いりで始まりましたが、結果としてNHK以外では十分使われることはありませんでした。

ハイブリッドキャストはVOD機能を実現するには非常に有効なツールでしたが、ハイブリッドキャストへのキックがデータ放送経由で、データ放送を流しているのが放送局のみといった限定的な使い方が災いしました。 もし、誰もが自由に使える環境が整えば、また違った商売が生まれる可能性はあります。

本件に関するご意見・お問い合わせ

「4K IP接続テレビ」の実現に向けた提言に関して、みなさまの率直なご意見をお待ちしております。また、提案した方式へのご賛同やARIBへの規格化等、お気軽にお問い合わせください。